飲食店の省エネ対策についてまとめました。対策すべき省エネポイントをはじめ、大手レストランチェーンの「すかいらーくホールディングス」と「びっくりドンキー」の省エネ対策の事例を紹介しています。
店舗のエネルギー使用状況の改善を目指している人は、ぜひ参考にしてください。
現代は国際情勢の変化に伴って燃料コストが高騰したり、輸入食材の価格上昇が続いたりと、飲食店を経営する上で困難な状況も少なくありません。また飲食店では空調設備や照明設備、調理器具など様々な設備や業務機器が稼働しており、日常的にエネルギーコストが高くなりがちになっている点も重要です。
そのため、飲食店において節電対策や省エネ対策を考え、適切に実践していくことは、ランニングコストを抑えて事業としての安定性を強化する上で大切になります。
飲食店を含め、多くの店舗における電力消費割合の大部分を占めているのが空調設備です。そのため、空調設備の省エネ化を図ることで、電気代の削減に繋がります。
空調制御システムは、快適性と省エネを両立した装置で、飲食店のランニングコスト削減に適しているでしょう。
ここでは、設備のクリーニング・空調の買い換え・空調制御システムの導入についてご紹介します。
空調用フィルターの清掃は必要不可欠です。フィルターの目詰まり予防のためにこまめに掃除が大切。
目詰まりしたまま使用を続けると、送風機が必要以上のエネルギーを消費してしまいます。冷暖房能力の低減にも繋がるので、定期的なクリーニングを心がけましょう。
万が一、10年前・15年前などに発売された古い空調設備を使用中なら、買い換えがおすすめです。
現在は、高い省エネ効果を発揮できる業務用製品も販売されているため、継続的な電気代の削減を目指す際は検討してみるとよいでしょう。
空調の運転を制御し、エネルギー効率の向上を促す装置です。
空調下と窓際では、室温の体感が違います。ところが空調制御システムを運用すると、室内環境にあわせて快適な室温に調整します。
空調設備の運転における最適化も目指せるので、省エネ効果の期待も大きいでしょう。
照明の省エネ対策でチェックすべきポイントは、点灯時間、照明の数、消費電力の3点です。
飲食店の照明の点灯時間は、短くても約10時間は超えるでしょう。昼間の明るい時間帯に照明の点灯数を抑えるだけでも、電気代の削減に繋がります。
また、無駄な照明を減らすのも効果的です。棚などの遮蔽物の影に設置していて光が入ってこなかったり、不要な場所を照らしていたりといった、無駄な照明がないか探してみましょう。
加えて、照明器具のメンテナンスも怠ってはいけません。適切な明るさを保てるほか、飲食店としての清潔さに磨きがかかります。
消費電力の低減を目指すなら、省エネ型照明を検討するのもありです。単に電力の消費を抑えられるだけでなく、照明から発する熱も軽減できるため、冷房の省エネにも期待できます。
飲食店の印象に大きく関わる照明器具。リラックスできる雰囲気を目指しているのか、それともファミレスのように回転率を重視しているのか、大人の隠れ家のような落ち着いた印象の店舗にするのかなど、飲食店の照明では、省エネ性能に加えてデザイン性の考慮も大切です。
インバータ式冷蔵庫を導入することで、消費電力の低減を目指せます。
インバータ式冷蔵庫では、扉を頻繁に開け閉めする時間帯や、ほとんど使用しない時間帯など、冷蔵庫の使用頻度に合わせて電力の出力をコントロール可能。
つまり、繁忙時間帯には高出力、そのほかの時間帯は低出力となるので、消費電力の省エネ化を図れます。
また、食品洗浄機を従来型のものから省エネタイプの製品に買い換えるのもありです。水量・洗剤濃度・電気使用量などを低減し、エネルギー消費を抑えます。
厨房機器の省エネ対策において、給湯システムの見直しも必要です。高効率のエネルギー消費を実現したエコキュートを導入すると、エネルギーを有効活用できます。
エコジョーズと呼ばれるガス式給湯器も販売されているので、設置スペースをコンパクトにしたい場合や、導入コストを抑えたい場合に候補に入れるとよいでしょう。
飲食店では空調設備や照明器具、厨房機器といった設備の他にも、コンセントから電力を取り入れて作動している様々な電化製品や業務機器があります。
どのような電化製品やシステムがコンセントに接続されているかは飲食店の規模やコンセプト、間取りなどによって異なっているものの、基本的な考え方として要不要を見直して使っていない機器のプラグを抜いたり、使用する時だけプラグを差し込んで待機電力を抑えたりといった工夫は共通しています。
同じ電力会社と契約していても、契約容量によって電気の基本料金が変わるため、きちんとしたシミュレーションを行うことで節電対策としてブラッシュアップしていくことは可能です。また、契約先となる電力会社を見直すことで、根本的なコストを再検討できるかもしれません。
契約容量を抑えつつ効率的な電力消費を続けていく手段として、適切な電子ブレーカーを導入したり、デマンド制御を適正化したりといったプランも考えられるでしょう。
電子ブレーカーについては事業者によってレンタルサービスを用意していることもあり、飲食店が新たに電子ブレーカーを購入・設置するコストを抑えながら、スムーズな省エネ対策へ続けていける場合もあります。
ガストやバーミヤンなどのファミリーレストランチェーンを展開する「すかいらーくホールディングス」と、ハンバーグレストランとして高い知名度を誇る「びっくりドンキー」の省エネ対策の事例についてまとめました。
すかいらーくホールディングスでは、店内照明にLEDを積極的に使用しています。LED照明は、白熱電球よりも消費電力が小さな製品です。
一部の新規店舗では客席や厨房など、店内すべての照明にLEDを導入し、消費電力の削減を図っています。この結果、通常の店舗と比べて店舗照明における消費電力は、8分の1に抑えられているようです。
すかいらーくホールディングスは、新規店舗のほか、既存の店舗にもLEDの導入を進め、省エネ化を目指しています。
びっくりドンキーは、2013年度のCO2排出量31,822トンを基準にし、2020年度には10,675トンまで減らすことに成功しました。その削減率は66.5%です。
脱炭素社会のために取り組んできたのは、エコ検針の実施、室温管理、冷蔵・冷凍設備のメンテナンスなど。様々な省エネ対策を継続して行ってきた結果、大幅な削減を実現しました。
また従来であれば無駄になる食品廃棄物を再生可能エネルギーとして有効活用していることも使用電力の低減に繋がっています。
一般的に売上の約3~5%を占めるとされる水道光熱費のなかでも、多くの飲食店経営者が電気代を節約したいと考えています。競争率が高い飲食店では、そのなかでも電気代を節約することが利益率を上げるのに欠かせないポイントとなるでしょう。
飲食店の電気代節約のポイントを、空調、照明の見直し、電力会社の見直しといった3つの観点からご紹介します。
飲食店において節電対策や省エネ対策は重要ですが、闇雲に電力消費を抑えたせいで顧客サービスの品質が低下したり、店舗としてイメージダウンへつながったりしては本末転倒です。
ここでは飲食店が節電・省エネ対策を進める際の注意点をまとめました。
飲食店が照明コストの無駄を節約しようと店内の照明器具を間引いた結果、薄暗い中で食事をしなければならなくなり、飲食店として不健全なイメージを与えてしまうといったリスクがあります。また店内や看板の照度を抑えたことで、宣伝効果が半減して訴求力を失うこともあるでしょう。
どのようなポイントで省エネ対策を実施するか、飲食店としてのスタイルや営業コンセプト、提供するメニューなども合わせて総合的に検討しなければなりません。
例えば空調費を節約するあまり、店内の温度や湿度が不快なものになれば、安心して食事を楽しむことも困難になります。
飲食店にとって省エネ対策や節電対策を実施する理由は、ランニングコストを抑えて事業の安定性を強化するためです。そのため、根本的にお客様にとって不快な環境を作ってしまい、リピーター客が減少して売上が低下するような取り組みを行っては意味がありません。
どのような対策も常にお客様の立場で考える姿勢が大切です。
厨房や倉庫、休憩室などの空調費を抑えた結果、そこで働く従業員の労働環境が悪化してしまうこともあります。
従業員への負担が増大すると、離職率が高まって人手不足に陥り、健全なサービスを維持できなくなるかもしれません。
従業員へ省エネ意識を共有して理解を求めることは大切ですが、過剰な負担をかけて労働意欲の減少につながらないように、従業員の意見についても耳を傾けながらプランニングしていくことを重視してください。