このページでは、物流倉庫における省エネ対策や節電の方法などについて解説しています。物流倉庫の効率的な運用性を維持しつつ、ランニングコストを軽減するための省エネ対策のポイントをまとめていますので参考にしてください。
物流倉庫はロジスティクスの中心地として重要な拠点であり、24時間365日体制で稼働している施設でもあります。そのため物流倉庫では常に電力や燃料といったエネルギー源が消費されており、省エネ対策や節電を効率化していくことで物流倉庫のランニングコストだけでなく、ロジスティクス業界のトータルコストの削減にもつながります。
加えて、現代は様々な国内情勢や国際情勢の影響によって燃料コストも増加しており、早い段階で省エネ対策を検討することで将来的なリスクを抑えつつ、ビジネスとしての安定性を強化していけることも重要です。
基本的に物流倉庫は24時間体制で稼働しており、当然ながら空調設備も常時作動しています。また倉庫の規模によって空調設備の数が多かったり、天井の位置が高くて床面から空調設備までの距離が遠かったりすることも少なくありません。そのため、日常的に空調設備の清掃が行えていない倉庫も多く、空調設備のフィルターにホコリなどが付着して空調効率が悪化しているケースがあります。
空調設備のフィルターをクリーニングすることで空調管理が効率化し、電力消費も抑えられることが重要です。
室外機の設置環境が悪い場合、サーモセンサーが誤作動を起こして適切な温度管理や空調管理が妨げられる可能性があります。そのため、空調設備の省エネ対策や節電プランを考えていく場合、室内環境だけでなく室外機の設置場所や周辺の状況についても配慮することが必要です。
特に、室外機の周囲に荷物や保管物などが置かれて正常な換気が妨げられている場合など、作業手順や運用上の問題についても改善していきましょう。
空調制御システムとは、コンピュータが温度や湿度といった環境をモニタリングし、あらかじめ設定している条件に合わせて空調設備のパワー調整などを自動制御してくれるシステムです。過剰なエアコンの使用や急な温度変化によるエネルギー消費率の悪化といったトラブルを回避し、効率的かつ安定的な空調設備の稼働体制を構築することができます。
空調制御システムの導入によって省エネ対策や節電効果を検討する場合、イニシャルコストの増大と長期的なランニングコストの節約という、2つのバランスを考えた上で将来的なメリットを追究していく戦略が大切です。
倉庫の中に保管棚や大型設備、各種機器などを設置すると、設計段階で想定していた数値よりも空調効率が悪化して、倉庫内の場所によって温度差(温度ムラ)が発生しやすくなってしまいます。
温度ムラが発生してしまうと、保管品を一定の条件で管理できなくなる上、空調効率が悪化したりエネルギーロスが増大したりしやすくなります。
倉庫内の温度ムラを解消するためには、必要な場所にサーキュレーターを設置したり、天井にシーリングファンを取り付けたりして、空気の流れを循環させることが大切です。また空気の流れを改善することで換気性も向上して作業員の安全にもつながります。
空調設備そのものが老朽化して効率性が悪化してくると、どれだけ作業体制や環境に配慮しようとしても省エネ対策や節電を促進することは困難になります。また、空調設備や制御システムなどは日進月歩で機能向上を続けており、省エネ性能に優れた設備を導入・更新することで結果的にランニングコストを削減できるケースも少なくありません。
いきなり全ての空調設備の刷新は難しくとも、省エネ効果を期待できる空調設備への変更を検討することは大切です。
倉庫を建設する段階で断熱性能に優れた資材を活用したり、建設後も外壁や屋根に断熱対策を施したりすることで、空調設備に頼らずとも温度管理を効率化できる場合があります。
断熱対策としては工事によって断熱材を貼り付けるといった大がかりなものだけでなく、ホームセンターで断熱シートを購入して窓に貼るなどDIY感覚で行えるものまで色々とあります。
ただし倉庫の規模や構造によっては断熱対策が難しい場合もあり、必要に応じて専門家に相談することも重要です。
24時間体制で稼働している上、適正な在庫管理やピッキング作業が重要になる物流倉庫では、昼夜を問わず庫内の視認性や安全性を保てるように照明器具が使用されています。そのため、普段から照明器具のお手入れを行い、十分な照度をキープしておくことは照明の省エネ対策としてだけでなく事故防止を目的とした安全管理としても有効です。
一度に全ての照明をクリーニングすることは大変なため、日頃から清掃手順を考えていくようにしましょう。
倉庫の照明器具や電球を、そもそも電力消費量の少ないLED製品に切り替えることで、庫内の明るさを維持するために必要な電力量を節約できることもポイントです。
また、LED照明の利点として電球の寿命が長く、白熱電球や蛍光灯よりも長い点灯時間を確保できることが挙げられます。そのため、LED照明の導入は電力消費の節約によってランニングコストを抑えられるだけでなく、電球の交換作業に関連して発生する電球の購入コストや作業コストの節約にもつながります。
倉庫内の視認性や作業の安全性を悪化させるような照明の間引きは論外ですが、必要な照度や設備の配置などを見直して、不要になった照明は電球を外すといった対策も効果的です。
また、LED照明に変更することで従来の白熱電球よりも明るさを確保できる場合があり、そうなれば必然的に照明器具の数の再検討も行えるでしょう。
棚の高さや設置場所を工夫することで、個々の照明が照らせる範囲を拡大して照明設備の必要数を抑えられることもあります。
調光機能を備えているような照明器具の場合、点灯範囲や照射範囲を調整して電力消費のロスを抑えられます。
また、同じ照明器具を使用していても、場所によって必要になる明るさや照射範囲は変わるため、それぞれの場面や環境に合わせたレベル調節などを行ってコストの効率化や健全化を進めることが可能です。
点灯範囲の細分化を正確に行えるよう、照明スイッチへ点灯マップなどを表示したりマニュアルを作成して共有したりすることも有効です。
照明設備の省エネ対策や節電方法として最初に取り組むべきものは、不要な照明をこまめに消して、無駄な電力消費を抑えることといえます。
例えば作業を終えて部屋が無人になるような場合、退出時に照明をオフにして電力消費量を節約したり、消し忘れ防止対策として扉に張り紙を貼ったりといった工夫が色々と考えられます。
また、日頃から従業員へ省エネ対策の大切さを共有しておき、会社全体の節電意識を強化しておくことも大切です。
倉庫の屋根に太陽光発電装置を設置して、倉庫で消費する電力を自家消費によってまかなうといった対策も考えられます。
倉庫や工場のような建物は比較的広い面積を有しており、また屋根の構造もソーラーパネルや各連設備の設置に適しているケースが少なくありません。
加えて、自治体によっては省エネ設備の導入に補助金や助成金が活用できる場合もあり、イニシャルコストを抑えながらランニングコストも節約していける可能性があります。
その他、ソーラーパネルが断熱材として機能し、夏場の温度上昇を抑えて空調コストの節約につながることもポイントです。
電力事業の自由化によって、契約する電力会社や契約プランの見直しを行いやすくなったことも重要です。
電力会社によって基本料金や契約内容が異なっている上、契約容量によって基本料金が変わる点も見逃せません。
月ごとや年間の消費電力量をしっかりとシミュレーションし、必要十分かつ最小限の契約容量を見極めてプランを調節することで、契約金や電気代を抑えられるかもしれません。
なお、基本料金の削減や節約を目指す上で「電子ブレーカー」の導入も効果的です。ただし電子ブレーカーを設置する場合は必ず契約先の電力事業者などに相談するようにしてください。
物流倉庫における省エネ対策や節電方法は、空調設備の種類や運用法の見直しと、照明設備の種類や運用法の見直しという、大きく2つのテーマで考えられます。また、機械的な変更や管理システム・制御システムのアップデートだけでなく、日々の作業手順の改善や作業員の意識改革といった方法でも省エネ対策を進めていける点が重要です。
物流倉庫は24時間体制で稼働しているからこそ、小さな積み重ねが大きなコスト減につながっていくことを意識していきましょう。