病院では、医療機関として地域の人々の健康や安全を守るために適切な医療体制を維持すると同時に、安定した経営を叶えてそもそも病院を存続させられるように取り組むことも重要となります。このページでは、病院経営におけるコストを削減して健全な医療環境を守れるように、病院の省エネ対策や節電方法についてまとめました。
病院を経営する上で電気代の相場として考えられる金額は、病院や施設そのものの規模や設備によって大きく変動します。ただし、建物として小さいからといって必ずしも電気代が安くなるというわけではなく、一年を通して安定した温度管理を維持するために、地域によってはエアコンや温度管理を行うための空調費用が大きくなってしまうことも考えられるでしょう。
また24時間体制で患者を受け入れているような病院であれば、必然的に診療時間が限定されている病院と比べて、照明器具などの費用が高額になっていくことも想定されます。
そのため病院の電気代は施設の規模や医療機関としての役割、入院患者の数や診療科の種類など様々なポイントを総合的に考慮して考えなければなりません。
電気代は病院経営を考える上で欠かせないコストであり、固定費として売上や利益に直結してくる費用です。そのため、電気代を節約することは固定費の削減になるため、病院経営の利益性を高めて事業の安定につながり、結果的に地域医療の健全化や安定化にもつながっていくことがポイントです。
また不要なコストを削減することで持続可能な社会の実現に向けて、公益性のある機関としての社会的責任を果たすことにもつながります。
国内の社会情勢や海外で発生している様々な問題などにより、燃料代や電気代の高騰が続いていることも重要です。燃料コストや電気代が高騰していけば、従来と変わらない電力使用量であっても電気代などの経費が増大していくため、結果的に病院の経営を不安定にしてしまうリスクとして考えられます。
今後の国内事情や国際情勢の変化を考えても、省エネ対策や節電方法について具体的な取り組みを検討し、前もって備えていくことが将来的なリスクの回避につながっていくでしょう。
病院では様々な電気機器や医療設備が稼働しており、それらの安定した動作によって患者の健康や医薬品の品質などが適正に保たれています。そのため、当然ながら電気代の節約や省エネ対策などを理由に必要な設備・機器の使用を中止することはできません。
また、特に入院患者のいる病院や重病者のケアを行っている病院では必然的に小規模なクリニックや医療機関よりも常時稼働の設備・機器の種類や規模が増大します。
救急病院や地域医療の基幹病院などでは常に患者の受け入れ体制を整えており、照明器具などの使用量も多くなります。また、入院患者のいる病院であれば常に非常事態に備えなければならないこともポイントです。
加えて、夜間診療を行っていない病院であっても医薬品の品質管理などのために適切な機器が24時間体制で稼働しており、やはり電力消費量が多くなりがちといえるでしょう。
病院における省エネ対策や節電方法を考える場合、まず患者の健康や安全管理に関わる設備・機器についてリスクを増大させるような取り組みは全て除外しなければなりません。
その上で、病院の電気代として特に大きなウェイトを占める空調設備や照明機器の省エネ・節電を考えていくことが重要となります。
ここでは主として空調設備や照明設備などの省エネ対策・節電方法をまとめました。
空調設備のクリーニングは空調機能に直接関わるポイントであり、きちんとフィルター清掃などを行うことで空調管理を適正化・効率化して、空調コストの削減につなげることが可能です。
空調設備のフィルターにホコリが付着していたり、内部のコイルに汚れが固まっていたりすると、設定した温度へ到達するまでに時間がかかって余計に電力消費が必要となります。そのため、空調設備をきちんと清掃して品質を維持することは、即時的な省エネ対策・節電方法として有効です。
省エネ機能に優れた空調設備へ買い替えたり、システムを更新したりすることで、同じ温度設定でも電力消費を抑えて省エネ対策や節電方法につなげることができます。
ただし、空調設備の刷新は毎月のランニングコストの低減には有効な一方で、どうしても導入時のイニシャルコストが発生してしまいます。特に病院内の空調設備はとても数が多いため、全ての空調設備を同時に入れ替えようとすれば短期的に高額なコストがかかってしまう点に注意してください。
空調制御システムとは、コンピュータや人工知能(AI)が自動的に現在の温度や湿度に合わせた空調温度の設定や風量制御などを行ってくれるシステムです。空調制御システムを導入することで患者にとって最適な温度を維持しやすくなる上、無駄な電力消費を抑えて省エネ対策や節電対策になることは見逃せません。また、膨大な数の空調設備を一元管理することが可能になり、もし一部の空調設備に不具合が発生していても速やかに検知して対処することもできます。
どれほど高性能な照明装置や照明器具を導入しても、電球や蛍光灯の表面が汚れてしまっていれば適切な光源として利用することはできません。
電球の清掃や蛍光灯の清掃といった照明器具のお手入れは、照明設備の明るさを適正化するため、衛生管理として有効なだけでなく省エネ対策や節電方法としても効果を発揮します。
また、特に患者の目に付きやすい場所にある照明装置が汚れていると、不潔感を与えてしまうため注意しましょう。
不要な部屋や場所の照明はこまめに消して、無駄な電力消費を抑えることは直接的な省エネ対策として有効です。また、日差しの強い夏場や昼間などは照明器具の光量を抑えながら屋外からの日光を取り入れて光源の代わりにするなど、時間帯や季節に合わせて照明装置の使い方を工夫することもポイントです。
ただし、省エネ対策や節電効果を気にするあまり、患者にとって不安感を与えたり業務に支障を来したりするようなことは避けましょう。
白熱電球や蛍光灯といった従来の照明設備から、LEDを活用した省エネ性に優れた照明設備へ交換するといった方法も効果的です。
病院は照明設備が多く、病院によっては24時間体制で点灯されている照明設備も少なくないため、LED照明へ切り替えることで大幅なランニングコスト減につなげられると期待できます。
ただし、照明設備が多いということはLED照明に切り替えるためのイニシャルコストも高くなりがちになるため注意してください。
採光性を高めて照明装置の節電につなげることは重要ですが、例えば夏場の強すぎる日差しをそのまま取り入れては室温が上がってしまい、結果的に空調コストが増大してしまうといった恐れもあります。
そのため、カーテンやブラインドで直射日光を遮りながら、室内の明るさ管理と空調設備による温度管理のバランスを整えていくことが、現実的な省エネ対策・節電方法のポイントです。
水を沸騰させてお湯や蒸気を発生させるボイラーは、燃料を燃焼させて比熱の高い水を温めるという仕組みから、どうしても燃料コストを上昇させる原因の1つになっています。
また、消費する蒸気量とボイラーの設置台数のバランスが整えられていなければ、ボイラーが頻繁に着火・消火を繰り返して運用効率が低下し、エネルギーロスが拡大してしまうことも重要です。
ボイラーの運用体制や設置状況などを見直して、ボイラーの効率化や適正化を行うことが大切です。
空調設備の室外機の設置環境に問題があれば、温度管理の機能品質が低下して、適切な空調管理を実行することが困難になります。室外機の設置条件や設置場所を適正化することで、温度管理の正確性が高まり、結果的に効率的な空調管理を実現できます。
また、空調設備のクリーニングを行う際は、室内のフィルター清掃やコイル清掃だけを意識するのでなく、室外機のフィンコイルの汚れも取り除くといった工夫を心がけることが肝要となります。
健康状態や生理機能が似ている患者にとって、適切な室温などの条件も近くなっていくことは重要です。また、夜間に病態の急変が多いようなケースでは照明設備の使用頻度も多くなってしまい、照明コストの削減を行いにくくなります。
そのため、健康状態やリスク面で類似性を持っている患者の病室をまとめることで、照明設備や空調設備の効率的な運用を行いやすくなる上、長期的なリスクマネジメントや医療実務の観点からも安全性や効率性の向上を目指すことが可能です。
入院病棟や重病者の状態管理などを行う病棟は、24時間体制で稼働させなければならない部門であり、病院内でも特に安全管理や環境管理が重要になっている場所といえます。
そのため、空調設備や照明設備による電力消費量が多く、院内全体で見た場合のエネルギー消費比率が高いことがポイントです。
しかし見方を変えれば、病棟の省エネ対策や節電対策を具体的に進めていくことで、病院全体のランニングコストの適正化につなげられることも見逃せません。
病棟の省エネ対策や節電対策を考える場合、患者の安全面に悪影響を与えないよう配慮しながら効率的なプランニングを進めていきましょう。
外来部門は稼働時間こそ病棟よりも短いものの、人の出入りが多く温度変化が生じやすい場所となります。また、季節によって影響を受けやすい部門でもあり、常に適切な空調管理を行うには専用のシステムや管理体制が必要になることも事実です。
加えて、外来部門は病院に対する人々からの印象を左右する場所になっていることもポイントです。そのため照明コストの削減を目指すあまり、薄暗い雰囲気になってしまって外来患者の不安感を強めるといった事態は避けなければなりません。
出入り口に風除室を設置したり診療時間や天候によって照明レベルを調整したりと、こまめな管理を心がけることが大切です。
診療部門は常に衛生管理を徹底しなければならない部門であり、空調管理や照明管理はもちろん、ボイラーを使った蒸気消費量なども増大しやすいことが特徴です。また、24時間体制で稼働させなければならない高度医療機器も多くなっており、待機電力や夜間の電力消費量が増えやすい部門といえます。
当然ながら必要な設備や機器の稼働をストップさせることはできないため、診療部門の省エネ対策や節電方法としては洗浄・滅菌に関する手順の効率化や、患者への対応が必要なタイミングと不要なタイミングで照明管理や空調管理を調整するといった工夫が有効となります。
病院内の医療システムをチェックしたり、空調設備や照明設備などを管理したりしている管理部門は24時間体制での運用が必要です。ただし、患者の個人情報などを管理する部門については一般的な事務所と同様の特性になるため、昼休み中や業務終了後の消灯を行ったり、クールビズやウォームビズを取り入れたりと様々な省エネ対策・節電方法を実施することができます。
また、スタンバイ中のOA機器は省エネモードに設定したり、窓のブラインド管理を適正化したりと、普段からスタッフが意識的に省エネ対策・節電方法へ取り組めるように院内の意識共有を進めていくことも大切です。
厨房は空調設備や照明設備の他にも、ガスコンロや冷蔵庫・冷凍庫、電子レンジなど様々な調理器具や電気設備が存在している部門であり、食品の管理を安全に行うためにも24時間体制の運用が必要になります。また、お湯を沸かしたり蒸気によって調理器具や食器を殺菌・滅菌したりとボイラーの使用率が大きくなりやすいことも重要です。
厨房における省エネ対策や節電方法としては、コンロの火加減や火力の適正化、調理手順の見直しによる作業の効率化、適切な食材管理によって冷蔵庫・冷凍庫に食品を詰め込みすぎないなど、色々な取り組みが考えられます。