このページでは、薬局(ドラッグストア)の店舗における省エネ対策や節電対策について多角的にまとめています。実際に各ドラッグストアで実践されている取り組みなども紹介していますので、ぜひコスト削減の具体策をプランニングする参考としてご活用ください。
薬局業界の中でも、特に調剤薬局でなくドラッグストアでは医薬品のみならず日用品や介護用品、食品といった多種多様な商品が販売・管理されており、地域住民の生活を支える重要な買い物拠点になっていることも少なくありません。また、ドラッグストアを訪れる利用者の中には体調不良の人も多く、少しでも快適な店内環境を構築・維持することも重視されています。
そのため、ドラッグストアでは空調設備や照明設備、冷蔵庫など様々な機械設備が稼働しており、省エネ・節電対策によって快適環境や機能を維持しつつランニングコストの削減を目指すことは事業戦略として重要です。
体調不良の人を含めて様々な人が訪れる薬局(ドラッグストア)では、基本的に一年を通して店内の快適環境を維持することが重視されます。また、特にドラッグストアは様々な商品を取り扱っており、調剤薬局などと比較して店舗面積が大きくなっていることもポイントです。
そのため、ドラッグストアを運営する上で温度管理を適正化したり、時期によっては花粉の飛散を抑制したりといった工夫は極めて重要であり、必然的に空調設備の電気代もランニングコストにおいて大きなウェイトを占めています。
言い換えれば、ドラッグストアの経費削減には空調設備の省エネ・節電対策が不可欠です。
空調設備のフィルターは日常的な稼働によってホコリがたまりやすくなっており、ホコリがたまってフィルターの通気性が悪くなれば空調機能が低下してしまいます。また、空調機能が低下している状態で無理矢理に理想的な店内環境を実現させようとすれば、それだけ空調設備に無理をさせることになり、電気代が高くなったり設備の劣化を早めたりといったリスクが一層に増大していきます。
定期的なフィルター清掃によって空調機能の維持管理を徹底することは重要です。
様々な事情を抱えた人が顧客として来店するドラッグストアは朝から晩まで一年を通して営業されており、常に快適な店内環境を維持することが顧客サービスとして大切であると考えられています。
一方、外気温の高い日に冷房を稼働させたり、冬の寒い日に十分な暖房効果を得ようとしたりすれば、それだけ空調設備の電気代が高くなってしまうことは避けられません。
そのため、あくまでも「来店者の快適性」について考慮しつつ、適温設定を再検討して少しでも空調設備に負担がかからないよう工夫することも大切です。
古い空調設備を使っている場合、同じ電力消費量であっても新しい省エネ機器と比較して空調性能に劣っているといったケースは少なくありません。そのため、長期的なランニングコストにもとづいてコストパフォーマンスを考えれば、たとえ導入コストをかけたとしても新しい省エネ空調設備などに交換した方がメリットを追求できる場合もあるでしょう。
なお、空調設備の入れ替えには工事が必要になるため、本体の購入費や作業費だけでなく、どのタイミングで入れ替え工事を行うかといった点も考えなければなりません。
空調制御システムとは、AI(人工知能)などを搭載している空調設備であり、センサーによって温度変化や来店者数など店内環境の現状を認識し、さらに状況に合わせて適切な温度管理や空調制御をオートメーション化してくれるシステムです。
空調制御システムを導入することで空調設備の効率的な利用環境を整えることが可能となり、結果的に電力消費量のロスを減じてコスト削減に結びつけていくことができます。
薄暗い店内環境は来店者の不安感を強めてしまうからこそ、広い店内を明るく照らす照明設備もまた空調設備に及ばないものの電気代削減を考える上で無視できないポイントです。
そのため、ドラッグストアの店舗において電気代削減を目指していく場合、照明設備に関する省エネ・節電対策を考えて実行していくことも重要になるでしょう。
ここでは照明設備の電力消費量を抑える方法についてまとめました。
照明器具の表面にホコリや汚れが付着していれば、どれだけ明るい照明設備であっても光が遮られて十分な照明効果を発揮できなくなるでしょう。そのため、照明設備の能力を無駄なく発揮させるために、照明器具を定期的にメンテナンスして適正な使用状況をキープしておくことが大切となります。
また、日常的に照明器具を手入れする習慣をつけることで、照明の球切れなどに早く気づきやすくなることもメリットです。
誰も作業をしていないのに倉庫の灯りを付けっぱなしにしていたり、無人にもかかわらず控え室の照明を付けっぱなしにしていたりと、身近な場所でも照明設備の無駄づかいが常態化しているケースは少なくありません。
使っていない部屋の電気をきちんと消すように社内の意識共有を促進することで、照明設備にかかる電気代を削減できるだけでなく、照明設備に対する意識そのものが変化してお手入れなども行いやすい環境を整えられます。
照明設備を従来の蛍光灯からLED照明に変更してしまうことも、電気代削減の方法として有効です。
LED照明は蛍光灯や白熱電球などの照明設備と比較して消費電力が小さいことを特徴としており、店内の照明をLED照明に変更するだけで即時的な電気代削減効果を得られます。ただしLED照明への交換コストが発生するため、実際にどの程度のコスト削減を叶えられて、その差額によってコストを回収するにはどの程度の期間が必要になるのか、きちんとシミュレーションをすることも欠かせません。
日本全国で薬局(ドラッグストア)の事業展開が進められており、同一エリア内で複数のドラッグストアチェーン店が営業しているといった状況も珍しくない現状です。また近年はコロナウイルス感染症の拡大によってインバウンド消費も冷え込んでおり、結果的にドラッグストア同士による顧客の取り合いが激化しています。そのため、少しでも事業性や収益性を向上させようと考えた際、電気代などランニングコストの削減は非常に重要なテーマです。
例えばドラッグストアでは様々な日用品や雑貨、飲食品などを売っているものの、やはりメインの役割としては医薬品や医療品、介護用品といった商品を販売したり、薬剤師に相談したりすることが求められています。
さて、医薬品の取り扱いや相談に関しては法律によって対応できる人材の属性や資格の有無が定められており、薬剤師や登録販売者といった専門スタッフを削減することはできません。また、その他のアルバイトやパート従業員を全て解雇すると、専門スタッフが本来の担当業務に対応できなくなり、結果的に薬局やドラッグストアとしての価値が損なわれます。
薬局(ドラッグストア)で取り扱っている商品の中にはメーカーや卸業者へ返品できるものがある一方、使用期限や消費期限などが定められており、売れ残れば返品不可で店舗のロスになってしまう商品も少なくありません。
そのため商品の在庫管理や廃棄ロスの削減といったテーマは重要ですが、それを徹底するには多角的な情報分析を日常的に行わなければならず、決して簡単でないことが現実です。
なお、廃棄ロスを恐れて商品の入荷を必要以上に制限してしまうと、「品ぞろえの悪い店」として悪印象が広がってしまうかも知れません。
薬剤師や登録販売者といった専門スタッフの削減が難しく、色々な事情やニーズを抱えて来店する顧客に対応しながら店舗運営を続けなければならない薬局(ドラッグストア)においては、何よりも電気代の節約によってランニングコストの削減を進めていくことが経営リスクを抑えられ即時的な効果も得られる方法といえます。
また社会的責任として地球環境を考えた省エネ対策を実践しているというアピールも、人々の健康や安心安全に携わる薬局(ドラッグストア)のイメージ戦略として重要です。
ウエルシアホールディングスでは地球環境に配慮しながら、様々な人々が幸せを追求しやすい持続可能な社会の実現を目指すための対策として、省エネ設備の積極的な導入を推進しています。2012年から各店舗の照明設備におけるLED導入をスタートさせており、2020年には全店舗における省電力化を実現しました。また、省エネ性能に優れた冷蔵・冷凍ショーケースや照明光反射率に優れた床材を使用するなど、様々な観点から電気代削減や二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいることも特徴です。
この他にも太陽光発電システムを導入した自家発電によるコスト削減を進めていることもポイントです。
ツルハホールディングスではドラッグストア各店舗におけるエネルギー消費量を見直して、地球環境に配慮した事業継続を重視しています。そのため、空調設備のEMS導入や店舗照明設備のLED導入といった取り組みを進めながら、削減した二酸化炭素排出量をJ-クレジット制度を通して売却することで、社会全体の二酸化炭素排出量削減に努めていることも重要です。
また、2021年には店舗で使用する電力の一部を自家消費型太陽光発電設備の導入でまかなう施策が開始されており、単に電気の使用量を減らすだけでなく積極的な再エネ活用を進めていることも特徴です。
ディスカウントドラッグコスモスでは企業としての社会的責任を全うするため、SDGsの目標達成に向けた取り組みを多角的に実践しており、特に電力消費量や二酸化炭素排出量が多くなっている要素として「空調・照明・冷蔵冷凍什器」の利用へ着目しました。
そしてそれらの対象設備を活用しつつ電力使用量の抑制効果を高めるためにも、店内照明の大部分をLED照明に切り替えたり、インバータ機器を搭載した空調設備や冷蔵冷凍什器を導入したりといった具体的な取り組みを実践していることは重要です。
なお、ディスカウントドラッグコスモスでは各年度における店舗数やCO2排出量などを、公式サイトにおいて実績として公表しています。
株式会社富士薬品では、2007年に富山工場において環境マネジメントに関する国際規格ISO14001認証を取得したことを皮切りに、グループ全体で認証取得に向けた取り組みや環境保護活動を行ってきました。
その上で、循環型社会への貢献に向けた事業戦略みとして、ボイラー設備の刷新や、空冷チラーや加圧給水ポンプといった産業用機器の高効率化など、具体的な対策を実践しています。また、廃棄物処理を委託している中間処理業者を訪問して適切な事業実施がされているか確認することで、ステークホルダーにおける取り組み状況をチェックしていることもポイントです。
サンドラッグでは環境保護を前提として多角的なアプローチを行っており、ペーパレス化や電子化を進めることで森林の保全を目指しています。また、各店舗におけるエネルギー使用効率を改善して、グループ全体での二酸化炭素排出量の削減を下支えしていることも重要です。
具体的には照明設備のLED化を進め、2021年3月末までにグループ全体の85%の店舗において導入を完了しました。また空調機器や冷蔵什器の新規導入・設備更新において、インバータ機器を搭載した製品を選択することでエネルギー消費効率を向上させて電気代削減や二酸化炭素排出量削減に努めていることも特徴です。
アイングループでは本社を中心に照明のLED化や社用車におけるハイブリッド車の導入、ノンワックス床材の採用といったアイデアを実現してきました。
また、一部大型店舗においてエコミラ(空調省エネシステム)を導入して空調コストを削減したり、社内事務所の室温を最適化しつつクールビズやウォームビズといった社内施策を実践したりと、設備と人が一体となって節約を進めていることがポイントです。
その他にはドラッグストア各点における日常的な節電対策を掲げ、照明設備を見直して不要な分を間引きしたり、空調温度設定を見直して空調機器の節電を進めたりといったことを実行しています。
マツキヨココカラ&カンパニーとして運営されているマツモトキヨシやココカラファインといったドラッグストアでは、空調設備やその他の電気設備の効率化を目指してデマンドコントローラーを導入し、必要以上の電力消費が検知された際には自動的に使用量を調整するといった仕組みを活用しています。また、既存店のリニューアルや新店舗の出店においてはLED照明の導入を優先し、照明設備の見直しだけでも1店舗あたりおよそ25%の節電効果を獲得することに成功しました。
2022年6月には一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会のSDGs推進委員会の一員として、サーキュラーエコノミープロジェクト実証実験にも参画しました。
カワチ薬品では地蔵可能な社会の実現を目指して、様々な視点から環境保護に向けた取り組みを行っています。2007年6月からはマイバッグ運動の推進をスタートさせ、各店舗設備を見直しながらLED照明の導入や高効率タイプの空調設備への改修、インバータ制御による空調設備・冷蔵冷凍什器の省エネ化といった改善策を実現してきました。
本社建物や店舗の中でも十分な面積等を有する場所を対象として、太陽光発電設備を設置し、自社で使用する電気について自家発電によってまかなうといった再エネ活用も進めています。
その他、専門業者を通じた古紙のリサイクルにも務めています。